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戦後(1950年)、無肥料ではなく自然肥料栽培だということで自然農法と改称され、現在に至る。

ここでは無化学肥料・無農薬が栽培基準となっている。 自然農法にはもう一つ、F氏によるものがある。
昭和十年代のほとんどの期間、高知県農事試験場に在職しながら、老荘思想的な自然哲学に基づいて「人間はなるべく何もしない」農法を模索していた福岡氏は、敗戦を期に退職し、試行錯誤を重ねて(何もしないためには、いろいろやってみなければならなかったのだ)、不耕起(田畑を耕さないこと)、無肥料、無農薬、無除草の農法を編み出し、これを自然農法と名づけた。 この二つの自然農法は、かつては交流もあったが、もともと思想が違い技術体系も異なる。
そこで両者を区別するときは、世界救世教系をMOA自然農法と呼ぶ。 一方、有機合成農薬を使用しないことが重要な課題になってからに相当する実践は、60年代から全国各地で散発的に行なわれてきた。
化学肥料の多投と農薬の多用、機械力の導入によって生産力増大をめざす近代農法を率先して実行した篤農家で、頻繁な農薬使用のため健康を害するなどの体験から農法の転換をめざした例が多い。 1971年、それらの農業者および関心を同じくする非農業者が、I氏を中心に集まってY(以下、Yと略す)を結成する。
有機農業という言葉と有機農業運動が日本に定着するのは、このあたりからだと考えてよい。 Yは、近代農業を工業的農業と位置づけ、それがもたらす健康阻害、環境破壊、外部エネルギー依存による高コストや生産意欲の喪失といった弊害を深刻に受け止め、農産物の商品化の進行に伴って失われた生産者と消費者の信頼関係を回復することに力を注いであるべき農業の確立・拡大をめざす運動体である。
その「あるべき農業」が有機農業というわけだ。 あんまり農法という言葉は使われないが、有機農産物については、「生産から消費までの過程を通じて化学肥料、農薬等の人工的な化学物質や生物薬剤、放射性物質をまったく使用せず、その地域の資源をできるだけ活用し、自然が本来有する生産力を尊重した方法43無農薬ならば「安全」なの力で生産されたもの」と定義しており、そういう農産物を生産する農耕技術がYのいう有機農法であろう。

量的にはゴミの「いわゆる有機野菜」二つの自然農法とYのいずれにも属さずに、無農薬・無化学肥料を栽培基準とする生産者もいないわけではない。 完全無農薬・無化学肥料を目標としながら、それでは収量が激減するので、いまのところ多少は使わざるをえないという移行期の生産者もいる。
また、無農薬・無化学肥料を絶対的な目標として設定せず、実行可能な範囲で減らせるだけ減らそうとする試みはこのところ増えてきている。 そのほかにも、くつに「あるべき農業」なんか問題ではなく、商品として差別化されることを狙って低農薬栽培に取り組む実践だってある。
自然農法やYの言う有機農業にこれらも加えて、その全体をここでは「いわゆる有機農業」と呼ぶことにする。 89年4月(平成元年度)に発足した農水省有機農業対策室は、この「いわゆる有機農業」の実態調査を行なっている。
91年7月に発表された「有機農業等の現状」と題する調査結果によると、いわゆる有機農業に取り組むケースは、個人、集団、法人を合わせて全国で1078例、そのうち無農薬に徹するのは415例(38.4パーセント)である。 農家戸数については回答の信頼性に疑問があるため公式には集計されていない。
しかし、調査担当者の感触では以前の調査と同様に今回の農家戸数も二万前後としてよいらしい。 そこで、いわゆる有機農業と取り組む農家を二万戸強、その40パーセント弱が無農薬だと想定すると、全国で約8千戸が無農薬栽培農家ということになる。
これは日本農業においてどれぐらいのウエイトを占めるのか。 実は農業統計上の農家の定義が平成二年度(90年)調査から変わり、耕作面積と農産物販売金額の両方で下限が引き上げられたため、90年の時点で日本の農家戸数は2百8十万戸強である。
しかし、前記の有機農業等の調査は、その定義の変更をいっさい意識しないで行なわれているので、母数としては89年との中間をとってきりのいい4百万戸とするのが妥当だと思う。 しがって、いわゆる有機農業を行なう農家はその0.5パーセント、無農薬栽培農家は0.2パーセント。これらは耕作面積や生産量の数字はないので、すべての農作物について、一戸当たり出荷量は全農家も無農薬栽培農家も同じだと仮定しよう。
すると、消費者の意識調査に登場した有機栽培T無農薬)野菜も野菜出荷量の0.2パーセントである。 実際には、完全無農薬の農産物は高い比率で特定の消費者グループや生協の班組織に直接届けられるので、市中に出回るものはもっと少ない。

言葉は悪いがゴミみたいなものだ。 コトバだけが流通していると断定する所である。
80年代半ばから通算4年間、神戸市や周辺の店頭で市販されている野菜の農薬残留を分析調査したM氏(K教授)らは、通常栽培野菜159例中72例(45パーセント)、無農薬栽培と称する160例中86例(54パーセント)から、有機リン系殺虫剤ダイアジノンの残留を検出した。 無農薬表示のほうが農薬残留率が高いという皮肉な結果だ。
そのころ、まだ大田に移転するまえの東京中央卸売市場神田支場では、全国から集まる青果物の約4割が「無農薬栽培」「有機栽培」などと称していた。 おまけに、場外では「無農薬」「有機」といった類の文字を印刷したシールまで売られていることがわかって、公正取引委員会が調査に乗り出し、日本百貨店協会などニセの無農薬野菜を取り扱っていた4団体に対し、消費者の適正な商品選択を阻害する恐れがあるとして文書による指導を行なった。
「有機」のほうがはたして不当な表示だったのかどうかには疑問があるが、「無農薬」が不当だったのは確かである。 そういう不当表示が許されるべきではない、という正論には同意せざるをえないが、私はこの「事件」におもわず失笑してしまった。
なにしろ、無農薬野菜の市場流通量はゴミみたいなものなのに、高くても買うという消費者が4割近くもいるのである。 これは起こるべくして起こったのだ。
そして、後述するように無農薬か有農薬かは食品の安全性となんの関係もない。 市場における無農薬神話を潮笑する天然農薬様物質一定の処理をしたサルモネラ菌に突然変異を引き起こすかどうかを調べて、発ガン性化学物質をスクリーニング(ふるい分け)する試験法がある。
テストで陽性だったからといって、ただちに発ガン性を意味するわけではないが、費用も時間も膨大にかかる動物実験で本格的にテストすべき物質かどうかをふるい分けるわけだ。 この試験法は、考案者であるK大学B校の生化学・分子生物学者B.Eの名をとってエームズ・テストと呼ばれ、世界中の研究室で広く採用されている。
そのEが、いま「渦中の人」となっている。 なにしろ彼は、アメリカ人が摂取する「農薬」の重量ベースで99.99パーセントは、植物が自己を防衛するために生体内で合成した化学物質であり、普通に食事をすれば、食品に残留する農薬の一万倍の天然農薬様物質を食べることになると発表したのだから、これは大問題になる。

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